「おーらいやがった!」
卓の縁よ壊れよと言わんばかりに豪快に叩きつけられる

。リーチイッパツツモ、赤4、裏1のバイマン。
親だった私は8000点を支払う。その手が若干震えてるのを見て、男が嫌らしく笑う。
「なんね? お兄ちゃんビクビクせんちよかっちゃ」
「そげん焦らんでも、別になんもせんけん」
「はぁ……」
曖昧な返事をしつつ点棒を渡す。ラスと3着は私と店長との定位置となり、持たされた20万はたちまち半分へ減ってしまう。
5の5−15。ラスで6万の麻雀である。これは普段部長たちが打っているレートだが、普段のアットホームなイメージとはがらりと変わり、なんとも嫌な空気が漂っている。隣の部屋からおばさんが出てくる気配がないが、その方がいいだろう。
一人は典型的な「オヤジ打ち」なのだが、もう一人の少々若い方は牌捌きが並じゃない。おそらくは『プロ』なのだろう。
半荘5回が過ぎ、手持ちの金も5万を切ったところで小休止となった。
「いつまでいるんです? あの人たち」
「たぶん、朝まではいると思うよ」
「カンベンしてくださいよ。貰った金、あと5万ないですよ」
「頼むよ人形君。君が帰ったら、妻に打たせないといけなくなるんだよ」
「……それは」
それは私としても望むところじゃない。この夫婦は子供がいないせいか、特におばさんは私に対してとても良くしてくれる。何度か打ったこともあるのだが、おばさんは児戯のレベルを超えていない。
「おいババァ! なんか作れや!」
「酒が無くなっとーやろが。はよ持ってこんか!」
トップと二着を連続で取り、気をよくしてるのかゲラゲラと笑いながらどっかりと足を投げ出す。
おばさんはアタフタと酒と食べ物の準備を始める。その姿は滑稽なほど震えており、それを見て男どもは更に笑い声を上げる。
「……ウゼェな」
「……え? 人形君?」
ぼそりと、声が漏れたのだろう。店長は慌てて廊下へ引っ張ってくれるが、私の目つきは変わっていた。
あれほど不快であった頭部からの汗や手の震えも止まっている。
店長にはなんの恩も義理もない。おばさんには好意は持っているがそれだけだ。
だが――
「いいですよ。付き合います」
「ほ、ホント?」
「おばさんに打たせるわけにはいかないじゃないですか」
今思えば安い正義感である。
だが、当時の私にはそれは絶対に譲れないラインであった。
続く。
続きを読まれたい方は、ぜひランキングをクリックしてやってください。
ランキング!!テーマ:麻雀 - ジャンル:ギャンブル
- 2006/03/11(土) 01:44:12|
- 日記
-
| トラックバック:0
-
| コメント:5